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4世代にわたるファミリーの夢と情熱から生まれたワイン造り
このドメーヌの歴史は、パリで薬局を営んでいたある家族がブルゴーニュでワインを造りたいという思いを形にしたことから始まった。
1974年、シャルル-アンリ・ジェノとその妻マリー・ブーランジェールは夢の実現のためにパリからムルソーに移住。そしてメルキュレに念願の最初の畑を得てドメーヌを設立した。1998年には、コート・ド・ニュイ、ボーヌ、コート・シャロネーズに広がる計30アペラシオン、22ヘクタールの畑を所有するまでに拡大した。
現当主は、4代目のオード・ラヴォレと、その夫のギョーム。熱意ある二人は2008年の彼らのファースト・ヴィンテージから、それぞれのパーセル、ブドウの株毎に合わせた品質管理をおこない、堆肥の使用や薬草の植栽など土壌の活性化を図った。また、ブドウの木の成熟と衛生のために剪定、摘芽、パリサージュ(ブドウ樹を支えるワイヤーの高さ調整)はしっかりと行う。それは「丁寧な畑仕事なしによいワインは飲むことが出来ない」という創立者シャルル・アンリの哲学とも合致する。
彼らは試行錯誤の結果、自然と土壌を尊重するブドウ栽培を目指し、ビオディナミへの転換を決意。2018年にはAB認証(AgricultureBiologique)を取得している。
セラーでは、なるべく人手を加えないという考え。彼らの哲学は、比類の無いテロワールを表現し、素晴らしいブルゴーニュのクリマを抽出すること。バランス良く、若いうちに飲んで美味しく、かつ4、5年寝かせた後に別の次元の魅力が現れるワイン造りを志向する。
白ワインは、アペラシオン問わず、パワフルさとフレッシュさのバランスが良いものを目指す。収穫は手摘み。ブドウは全房のままプレスし、軽く沈殿させた後、オーク樽にて自生酵母で発酵の後、熟成。熟成前酸化を避けるため、バトナージュはしない。12か月の熟成の後、澱引き、タンクに移しさらに6か月熟成。テロワールが表現されながらリッチさと、柔らかさ、エレガンスを兼ね備えたワインになる。
赤ワインも全て手摘み。ヴィンテージによって全房比率を判断。3~4週間かけて極力自然発酵。自生酵母は毎年同じにはならないため、それもその年の特長となる。柔らかい抽出を目指し、ピジャージュの回数はキュヴェとヴィンテージによって調節。続いて12カ月間オーク樽で、その後6か月ステンレスタンクで熟成させる。
Genot Boulanger Chambolle Musigny 2017
イチゴやクランベリーの赤い果実が、ダンスのようにくるくると香り、開いていく。気品がありエアリーな香りはこのアペラシオンの特別さを物語っている。口に含むとエレガントで繊細さに溢れ、フレッシュでタンニンは控えめ。グルメな踊り子、といったワイン。
2つの区画から構成≪ les Nazoires ≫ ≪ les Mombies ≫いずれも国道沿い。樽熟成12か月、新樽20%。瓶詰め前に6ヶ月のタンク熟成。無濾過、無清澄。ややキャッチーなシャンボール。
◆ワインレポート試飲記事より◆ ブルゴーニュで久しぶりの発見、ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール
2020/08/03試飲
ブルゴーニュには、思いがけない発見がある。ネゴシアンにブドウを売っていたドメーヌが、世代交替して、驚くような品質のワインを造ることがあるのだ。
ムルソーに居を構える「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール」(Domaine Genot-Boulanger)の歴史はそれほど長くない。パリで薬局を営んでいた、シャルル・アンリ・ジェノとマリー・ブーランジェール夫妻が1974年に移住。メルキュレに畑を購入し、コート・シャロネーズ、コート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌまで30アペラシオンに22haの畑を所有するまでに拡大した。
婿入りしたギョーム・ラヴォレが2008年、4代目当主になり、ネゴス販売から自家元詰にかじを切り、一気に品質が向上した。ビオディナミを導入し、2018年にはAB(アグリキュルチュール・ビオロジック)の認証を取得。醸造はブドウにストレスを与えないハンズオフのアプローチだ。「テロワールを素直に表現する、バランスのとれた純粋なワイン。若くても楽しめ、十分に熟成するポテンシャルを持つワインを目指している」という。
ドメーヌを日本に紹介したのは、6月に祖父グロフィエを亡くしたニコラ・グロフィエ。品質が高いので、強く推薦してきたという。エティエンヌ・ソゼのブノワ・リフォー、ジャン・ニコラ・メオ、ダヴィド・デュバンらと交流がある。
フランスでは既にトップドメーヌと見なされている。パリの3つ星「Kei」「ピエール・ガニェール」「ギィ・サヴォワ」、2つ星「アストランス」「ミシェル・ロスタン」らがオンリストしている。遅ればせながら、日本に入ってくるのは朗報だ。白と赤5銘柄を試飲した。
白ワインは全房圧搾し、野生酵母で発酵する。プレモックス(熟成前酸化)を避けるため、バトナージュはしない。20%新樽で12か月間の樽熟成後に、ステンレスタンクで6か月間の熟成。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール ボーヌ・ブラン アン・リュリュンヌ 2017」(Domaine Genot-Boulanger Beaune Blanc En Lulunne 2017)はポマールとの境界にある南向き斜面の上部。0.24ha。スイカズラ、白桃のコンポート、赤いリンゴ、まろやかなテクスチャー、下半身の安定したストラクチャーと丸い果実のバランスが極めてボーヌ的。塩味とほろ苦さの交じる繊細な味わい、標高の高さからくるリニアなフィニッシュ。5200円はうれしい。91点。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール ムルソー・レ・メシャヴォ 2017」(Domaine Genot-Boulanger Meursault Les Meix Chavaux 2017)はオーセイ・デュレスとの境界にある斜面の中腹の0.5ha。北東向きの表土が薄く、石の多い粘土石灰岩土壌。レモンオイル、白桃、丸い石、スリムで繊細だが、ほのかなヴァニラが厚みを与えている。カシューナッツ、潮の飛沫、オーセイ・デュレスからの冷気の影響を受けて、緊張感をはらんでいる。活力のあるフィニッシュ。同じ区画で造るルーロにひけをとらないフィネスと透明感があるが、価格ははるかに安い。9000円。92点。
赤ワインは年によって全房発酵を用いる。ステレンスタンクで野生酵母により3週間前後発酵。抽出は穏やかで、ピジャージュの回数は少なめ。20%新樽で12か月間の樽熟成後に、ステンレスタンクで6か月間の熟成。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール ヴォルネイ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2017」(Domaine Genot-Boulanger Volnay Vieilles Vignes 2017)は1950年に植えたLes Echardsを含む4区画1.28haのブレンド。スミレ、ラズベリー、野いちご、ビロードのようなテクスチャー、しなやかなタンニン、太い果実のあるフルボディ。表現力があり、豊かなエネルギーが詰まっている。アーシーなフィニッシュ。7300円。91点。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール シャンボル・ミュジニー 2017」(Domaine Genot-Boulanger Chambolle-Musigny 2017)はD974に接する斜面下部のLes Nazoires とLes Mombiesの0.76haから。フローラルで、ラベンダー、クランベリー、ラズベリー、丸い石、シルキーで、熟度が高く、ふくらみのある味わい、チョーキーな酸が引き締めているミディアムボディ。タイトだが、空気にふれて広がる。ミネラル感がフィニッシュに反響する。9700円。91点。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール ボーヌ・プルミエクリュ・レ・グレーヴ 2017」(Domaine Genot-Boulanger Beaune 1er Cru Les Greves 2017)は説明不要のボーヌのトップ・プルミエクリュ。南東向きの斜面中腹の砂と石交じりの粘土石灰岩土壌。1960-80年に植えた。1.04ha。ボーヌらしいストラクチャーのあるフルボディ。ダークラズベリー、野いちご、きめ細かなタンニン、シルキーで、抜けが良い。豊かさと深みがあり、長期熟成するのは間違いない。滋味を帯びた長いフィニッシュ。数あるボーヌ・グレーヴの中でも上位グループに入る。9700円。93点。
ポートフォリオには、クロ・ド・ヴージョやコルトン・シャルルマーニュのほか、ピュリニー・モンラッシェのプルミエクリュも含まれる。よくもこんな造り手が埋もれていたものだ。価格が控えめなのもうれしい。久しぶりにワクワクさせられたドメーヌだ。
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4世代にわたるファミリーの夢と情熱から生まれたワイン造り
このドメーヌの歴史は、パリで薬局を営んでいたある家族がブルゴーニュでワインを造りたいという思いを形にしたことから始まった。
1974年、シャルル-アンリ・ジェノとその妻マリー・ブーランジェールは夢の実現のためにパリからムルソーに移住。そしてメルキュレに念願の最初の畑を得てドメーヌを設立した。1998年には、コート・ド・ニュイ、ボーヌ、コート・シャロネーズに広がる計30アペラシオン、22ヘクタールの畑を所有するまでに拡大した。
現当主は、4代目のオード・ラヴォレと、その夫のギョーム。熱意ある二人は2008年の彼らのファースト・ヴィンテージから、それぞれのパーセル、ブドウの株毎に合わせた品質管理をおこない、堆肥の使用や薬草の植栽など土壌の活性化を図った。また、ブドウの木の成熟と衛生のために剪定、摘芽、パリサージュ(ブドウ樹を支えるワイヤーの高さ調整)はしっかりと行う。それは「丁寧な畑仕事なしによいワインは飲むことが出来ない」という創立者シャルル・アンリの哲学とも合致する。
彼らは試行錯誤の結果、自然と土壌を尊重するブドウ栽培を目指し、ビオディナミへの転換を決意。2018年にはAB認証(AgricultureBiologique)を取得している。
セラーでは、なるべく人手を加えないという考え。彼らの哲学は、比類の無いテロワールを表現し、素晴らしいブルゴーニュのクリマを抽出すること。バランス良く、若いうちに飲んで美味しく、かつ4、5年寝かせた後に別の次元の魅力が現れるワイン造りを志向する。
白ワインは、アペラシオン問わず、パワフルさとフレッシュさのバランスが良いものを目指す。収穫は手摘み。ブドウは全房のままプレスし、軽く沈殿させた後、オーク樽にて自生酵母で発酵の後、熟成。熟成前酸化を避けるため、バトナージュはしない。12か月の熟成の後、澱引き、タンクに移しさらに6か月熟成。テロワールが表現されながらリッチさと、柔らかさ、エレガンスを兼ね備えたワインになる。
赤ワインも全て手摘み。ヴィンテージによって全房比率を判断。3~4週間かけて極力自然発酵。自生酵母は毎年同じにはならないため、それもその年の特長となる。柔らかい抽出を目指し、ピジャージュの回数はキュヴェとヴィンテージによって調節。続いて12カ月間オーク樽で、その後6か月ステンレスタンクで熟成させる。
Genot Boulanger Chambolle Musigny 2017
イチゴやクランベリーの赤い果実が、ダンスのようにくるくると香り、開いていく。気品がありエアリーな香りはこのアペラシオンの特別さを物語っている。口に含むとエレガントで繊細さに溢れ、フレッシュでタンニンは控えめ。グルメな踊り子、といったワイン。
2つの区画から構成≪ les Nazoires ≫ ≪ les Mombies ≫いずれも国道沿い。樽熟成12か月、新樽20%。瓶詰め前に6ヶ月のタンク熟成。無濾過、無清澄。ややキャッチーなシャンボール。
◆ワインレポート試飲記事より◆
ブルゴーニュで久しぶりの発見、ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール
2020/08/03試飲
ブルゴーニュには、思いがけない発見がある。ネゴシアンにブドウを売っていたドメーヌが、世代交替して、驚くような品質のワインを造ることがあるのだ。
ムルソーに居を構える「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール」(Domaine Genot-Boulanger)の歴史はそれほど長くない。パリで薬局を営んでいた、シャルル・アンリ・ジェノとマリー・ブーランジェール夫妻が1974年に移住。メルキュレに畑を購入し、コート・シャロネーズ、コート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌまで30アペラシオンに22haの畑を所有するまでに拡大した。
婿入りしたギョーム・ラヴォレが2008年、4代目当主になり、ネゴス販売から自家元詰にかじを切り、一気に品質が向上した。ビオディナミを導入し、2018年にはAB(アグリキュルチュール・ビオロジック)の認証を取得。醸造はブドウにストレスを与えないハンズオフのアプローチだ。「テロワールを素直に表現する、バランスのとれた純粋なワイン。若くても楽しめ、十分に熟成するポテンシャルを持つワインを目指している」という。
ドメーヌを日本に紹介したのは、6月に祖父グロフィエを亡くしたニコラ・グロフィエ。品質が高いので、強く推薦してきたという。エティエンヌ・ソゼのブノワ・リフォー、ジャン・ニコラ・メオ、ダヴィド・デュバンらと交流がある。
フランスでは既にトップドメーヌと見なされている。パリの3つ星「Kei」「ピエール・ガニェール」「ギィ・サヴォワ」、2つ星「アストランス」「ミシェル・ロスタン」らがオンリストしている。遅ればせながら、日本に入ってくるのは朗報だ。白と赤5銘柄を試飲した。
白ワインは全房圧搾し、野生酵母で発酵する。プレモックス(熟成前酸化)を避けるため、バトナージュはしない。20%新樽で12か月間の樽熟成後に、ステンレスタンクで6か月間の熟成。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール ボーヌ・ブラン アン・リュリュンヌ 2017」
(Domaine Genot-Boulanger Beaune Blanc En Lulunne 2017)はポマールとの境界にある南向き斜面の上部。0.24ha。スイカズラ、白桃のコンポート、赤いリンゴ、まろやかなテクスチャー、下半身の安定したストラクチャーと丸い果実のバランスが極めてボーヌ的。塩味とほろ苦さの交じる繊細な味わい、標高の高さからくるリニアなフィニッシュ。5200円はうれしい。91点。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール ムルソー・レ・メシャヴォ 2017」
(Domaine Genot-Boulanger Meursault Les Meix Chavaux 2017)はオーセイ・デュレスとの境界にある斜面の中腹の0.5ha。北東向きの表土が薄く、石の多い粘土石灰岩土壌。レモンオイル、白桃、丸い石、スリムで繊細だが、ほのかなヴァニラが厚みを与えている。カシューナッツ、潮の飛沫、オーセイ・デュレスからの冷気の影響を受けて、緊張感をはらんでいる。活力のあるフィニッシュ。同じ区画で造るルーロにひけをとらないフィネスと透明感があるが、価格ははるかに安い。9000円。92点。
赤ワインは年によって全房発酵を用いる。ステレンスタンクで野生酵母により3週間前後発酵。抽出は穏やかで、ピジャージュの回数は少なめ。20%新樽で12か月間の樽熟成後に、ステンレスタンクで6か月間の熟成。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール ヴォルネイ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2017」
(Domaine Genot-Boulanger Volnay Vieilles Vignes 2017)は1950年に植えたLes Echardsを含む4区画1.28haのブレンド。スミレ、ラズベリー、野いちご、ビロードのようなテクスチャー、しなやかなタンニン、太い果実のあるフルボディ。表現力があり、豊かなエネルギーが詰まっている。アーシーなフィニッシュ。7300円。91点。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール シャンボル・ミュジニー 2017」
(Domaine Genot-Boulanger Chambolle-Musigny 2017)はD974に接する斜面下部のLes Nazoires とLes Mombiesの0.76haから。フローラルで、ラベンダー、クランベリー、ラズベリー、丸い石、シルキーで、熟度が高く、ふくらみのある味わい、チョーキーな酸が引き締めているミディアムボディ。タイトだが、空気にふれて広がる。ミネラル感がフィニッシュに反響する。9700円。91点。
「ドメーヌ・ジェノ・ブランジェール ボーヌ・プルミエクリュ・レ・グレーヴ 2017」
(Domaine Genot-Boulanger Beaune 1er Cru Les Greves 2017)は説明不要のボーヌのトップ・プルミエクリュ。南東向きの斜面中腹の砂と石交じりの粘土石灰岩土壌。1960-80年に植えた。1.04ha。ボーヌらしいストラクチャーのあるフルボディ。ダークラズベリー、野いちご、きめ細かなタンニン、シルキーで、抜けが良い。豊かさと深みがあり、長期熟成するのは間違いない。滋味を帯びた長いフィニッシュ。数あるボーヌ・グレーヴの中でも上位グループに入る。9700円。93点。
ポートフォリオには、クロ・ド・ヴージョやコルトン・シャルルマーニュのほか、ピュリニー・モンラッシェのプルミエクリュも含まれる。よくもこんな造り手が埋もれていたものだ。価格が控えめなのもうれしい。久しぶりにワクワクさせられたドメーヌだ。
輸入元はラック・コーポレーション。